コリドラスの繁殖を考える③ 産卵から孵化までを掘り下げて解説

Moi!こんにちは、cory-paradiseです。

さて今回は繁殖を考えるシリーズの3作目です。

産卵から孵化までのところを少し掘り下げてみたいと思いますが、言葉にすれば「卵を産んだら孵化を待つだけ」ですよね。でも、この間は簡単そうで意外と失敗やつまずきが多い場面でもあります。

そこで具体例も交えながら進めていきましょう。

はじめてご覧になる方は、過去2作のおさらいもして頂けると嬉しいです。

産卵から孵化までのよくある失敗

私も相談されたことがありますし、同じ相談をネットで探すと、それなりに多く見つけることが出来ます。しかし状況は様々で一概に原因を特定することは出来ず、これと言った回答がないのも事実です。

しかし失敗の種類を整理してまとめると、それほど多くはないことに気づきます。

  • コリドラスや他の魚に卵を食べられた(食卵)
  • 採卵の失敗(潰したり、手が届かず採卵出来ない
  • 無精卵だった
  • 卵がカビてしまった
  • (これといった理由はないけど)孵化しなかった

失敗って、経験してみないとわからないことも多いからね。

それはそうだけど、誰だって失敗はしたくないものなんだから予備知識は重要よね。今回は責任が重いわよ

うわぁ、プレッシャーかけるなぁ。

ここはあなたのサイトなんだから当然でしょ。頑張って解説よろしく。

うむ! それじゃあ一つずつ対策をお話ししていきましょう。

…と、その前に。あくまで持論ですが、アクアリウムでは正解を求めるのではなく、失敗する可能性を地道に減らしていくことが成功へのカギだと思っています。

ですから、失敗は悪ではないということを念のため付け加えておきますね。

コリドラスや他の魚に卵を食べられた(食卵)

コリドラスも含めて基本的に生き物は卵を食べるのが大好きです。動かないから捕食しやすくて栄養満点とあれば、食べるのが自然ですよね。

コリドラスだけの水槽なら卵は食べられないと思っている方、それは誤解です。

コリドラスの多くは独特な繁殖行動(T-ポジション)が災いして、一度に大量に産むことは出来ません。数多く産卵するにはそれなりの時間がかかりますので、その間に他のコリドラスや混泳魚に捕食されたり、エビや貝類に齧られて卵が死んでしまうことは充分にあり得ることです。

ちなみに産卵したメス本人も食卵しますし、産ませたオスも食卵します。

個体差はあるけど、コリドラスは同じ個所に何度も産み付ける傾向があるの。卵を産み付けようとしたメスと後を追いかけているオスが、通りがかって反射的に先に産み付けた卵を食べてしまうことがあるのよ。

繁殖という結果を望むのであれば可能性の高い方を選択すべきなので、食卵を回避するには採卵することが有効だと言えますね。

採卵する時に潰した 手が届かず採卵出来なかった

採卵の仕方については結局のところ慣れるのが一番です。

コリドラスの卵は産卵直後は非常に柔らかく粘着性も強いため採りにくく、強い力を加えると潰れてしまうこともあります。ですが時間経過とともに指で軽くつまんだ程度では潰れなくなり、粘着性もやや弱くなりますので採卵し易くなります。

採卵は産みたてではなく、時間を置くことがポイントです。

どれくらいの時間を置けばいいの?

食卵を目撃していないなら半日もしくは丸一日経ってからでもいいよ。そうすることのメリットもあるしね。

食卵されている時は?

なるべく早く! としか言いようがないかな。その場合は卵を潰してしまうかもしれないけど、それも含めて慣れが必要ってことだね。

もし急いで採卵する事態に備えるのなら、水槽レイアウトをシンプルなものにしたり、繁殖させたいコリドラスだけの専用水槽を別に用意するのが有効です。
そうすることで卵に手が届かない事態も起こりにくいですし、食卵する魚を隔離したりといった対処も素早く行えます。

つまりコリドラスの繁殖準備をするなら、採卵することは前提条件にしておいた方が都合がいいってことですね。

がっつりレイアウトした水槽で産んだ時はどうするの?

まぁ、あり得ることだよね。残念だけど手が届く範囲で採卵するしかないし、そもそもがっつりレイアウトの水槽なら繁殖を望んでいないケースもあるから採らない選択もありだと思うよ。そこは飼育者の判断だね。 運が良ければ孵化後の稚魚を発見できる事もあるしね。

そうゆう稚魚の方が丈夫に育ったりするのよね

あるある。

採卵したけど無精卵だった

せっかく苦労して採卵したのに無精卵…。がっかりしますよね。

でも、おそらく有精卵と無精卵を見分けるには一定の時間を置いてみるしか方法はないと思います。なので私は、半日から1日(長いときは1日半)経過した時点で採卵を始めることが多いです。

時間置きすぎじゃない。食卵とか心配でしょ?

確かに食卵される可能性もありますが、実際に食卵を確認していないのならば急ぐ必要はありませんし、その頃になると有精卵と無精卵の違いがはっきりしてくるのです。これが前の項でも触れたメリットなのです。

卵の中心にぼんやりと黒い核が見えて全体に茶色っぽくなっているのが有精卵、核が見えず全体に透明or白っぽいのが無精卵です。ただし、水温によっては経過時間どおりにならない場合もありますのでご了承ください。(写真は水温24℃)

ちなみに若いコリドラスに多く見られますが、卵を上手に産み付けられず落としてしまい砂まみれになる場合がありますが、無精卵だと粘着性がほぼ失われてしまうようで砂が取れてしまいます。
逆に言うと砂だんごのままなのが有精卵ですね。無精卵を採卵する労力を惜しむなら、このように見分けて有精卵のみを採卵すればよいのです。

孵化する直前に有精卵だけ採卵すれば完璧ってこと

うん、いい着眼点なんだけど、孵化直前は稚魚が抜け出やすいように卵が最も潰れやすくなっているので採卵は止めた方がいいですね。

なお、産卵に不慣れな若い個体だと、せっかく産んでも無精卵ばかりということもあります。そういった場合は焦らず飼育を続けて次回のチャンスを待ちましょう。

生き物なんだから思うようにいかなくて当たり前。飼育者にはどっしり構えて見守る姿勢が必要とされる場面もあるんだ。

水カビ対策

有精卵のみを採卵するメリットは何か?
それは水カビが発生するのは無性卵の場合がほとんどなので、有精卵と一緒にしておくのはリスクがあるためです。

ただし100%ではありませんから、より成功する確率を上げるため有精卵にも水カビ対策はしたほうがよいでしょう。

経験上ですが、水カビの発生は飼育水を使用して(または飼育水槽内の隔離箱とかで)孵化させようとすると起こり易いように思います。
そのため必ずプラケースなどの孵化容器を用意し、温度を合わせた水道水をカルキ抜きせずそのまま使います。

水道水に含まれる塩素が細菌やカビの繁殖、それに伴う水の傷みを抑えるので薬品は使用しません。孵化する頃には塩素は抜けてしまいますからね。

ちなみに、コリドラスは種類によって孵化までの日数が微妙に異なります。
水温24~26℃で、3~5日が標準的でしょう。水温が低いと孵化までの日数が長くなり、塩素切れで水カビが発生します。逆に水温が高過ぎると孵化は早くなりますが、水の痛みも早くなるので水カビが発生しやすい状況になります。

つまり適切な温度管理も水カビ発生のリスクを減らす方法の一つです。

(これといった理由はないけど)孵化しない

さて最後のケースですが、これははっきり言って原因を特定するのは困難です。

  • 水温が一定でなかった
  • 稚魚の成長(核分裂)が上手くいかなかった
  • 稚魚が自力で卵から出られず力尽きた
  • 初産でもともと弱い卵だった

などが考えられますが、どれも定かではありません。一応それぞれの対処(と思われる方法)を以下に記述しますが、あくまで参考程度にご覧ください。

水温を保つ方法

プラケースなど孵化容器内の水温を一定に保つには、飼育水槽に浮かべる、または小型ヒーターを使用するといった一般的な方法を用いて水温をこまめにチェックしていれば問題ないと思います。
よほど大きな水温の変動がなければ低めの水温でも日数はかかりますが孵化するはずです。何か根本的なミスが他に隠れているかもしれません。

核分裂を阻害する?

よくある質問に卵にエアレーションは必要かどうか?というのがありますが、私はエアレーションは使用しません。フィルター類も使用せず、完全に止水の状態で卵を管理します。

なぜなら水流が出来ると卵が転がって核分裂を妨げるという話を聞いたことがあり、比較実験してみると確かにエアレーション無しの方が孵化までの日数が短く、若干孵化率が高かった経験からです。

そうは言っても、あくまで一例ですのでご参考までに。

稚魚のハッチアウトを助ける方法

稚魚の頭部がなかなか卵から出られない場合ならば、スポイトで軽く水を吹きかけてあげると活発に動いて抜け出たりします。しかし、卵から全く出ていない場合は見守るしかありません。最長で8日目に孵化した例もあります。

なかなか孵化しないのは飼育者にとって非常に歯がゆいものではありますが、実際に打つ手がなくても観察を続けることが後々にも繋がる大切な事だと思っています。

初産については、さっきも言ったけど生き物は思うようにいかないなんて当たり前。だからじっくり飼育を続けることが対策かな。

あとがき

どうも文字ばかりで退屈な記事になってしまいましたね。
今回ご紹介したお話しは、基本的に指で採卵可能なコリドラスの場合を想定しています。ハステータスなどのミニコリや、卵が小さく大量に産むエレガンス系などには適さない場合もありますのでご注意下さい。

実際に産卵~孵化にかけて飼育者が出来ることは限られています。
成功するためにあれやこれやと試すのも間違いとは思いませんが、勇気を持って観察に徹底することで見えてくることもあるのではないでしょうか?

以前に繁殖は愛だと言いましたが、観察することは愛情表現の一つだと思うのです。

次回は「稚魚の育成」についてお話ししたいと思います。どうぞお楽しみ下さい。

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